「おまえがのぞむなら、命も惜しまぬ」
孔明は姜維や娘の朝薫、細作数名を連れ、微行で呉へと向かう。目的は孔明の兄の諸葛瑾に会うこと。その旅がきっかけとなり、姜維と朝薫は互いに心惹かれる。そして孔明も、姜維を娘の婿とするつもりでいた。
だが、夜更けに朝薫の元を訪れようとした姜維は、孔明と魏延のことを目撃してしまう。さらに魏延の言葉から、孔明が自分に良く似ていたという周瑜とも関係を持っていたことを知る。のだが――正直に言ってしまおう。この最終巻の粗筋はあまりにも苛烈で書けない。実はそれでUPまで時間がかかってしまった(心弱い乙女なの…笑)。
物語はラストに向けて急速に収斂していく。そのストーリー運びにも無理がなく、綿密に張られた伏線が後半になればなるほど生きてくる。
孔明を憎悪し、執拗に命を狙う暗殺集団・赤眉の首魁たる男の正体に驚かされる。男は、司馬仲達の軍師となっていたが、孔明の過去を丁寧に調べた仲達にその正体を見破られ、殺されてしまう。なぜ敵対している仲達が孔明の仇敵たる男を取り除いたのか分りにくいのだが、その男の孔明に対する憎しみ、哀しみは哀れでもある。
だが一番の衝撃は、孔明が非業の最期を遂げることだ。この結末は、表面上の史実は同じなのに、江森氏にかかると今までの三国志が浅く感じられてしまほど。二次創作としては掟やぶりかもしれない創作人物の用い方などにも違和感なく、江森氏の力量に、ただただ感服。
最後まで孔明に付き添う魏延がいい。男気のある「これぞ男」――それとも、恋のなせる業かな。
|