カヴァフィス全詩集 (1991年 みすず書房)
たぶん「詩」というジャンルはマイナーなのだろう。それでもご紹介したい作品がある。 この詩集の訳者、中井久夫氏は本書によって第40回読売文学賞を受賞している。お陰で この素晴らしい作品が読めたのだと考えると、ありがたいことである。
以下は選考委員の評より――
| 中井久夫さんの訳のせいで、わたしは、なるほどカヴァフィスの詩はこういう息づかい、こういう色つやであったのかと、ずいぶん納得が行った。医学者が専門の業績をあげながら、これほど質の高い文学的作品を発表する。そのことにわたしは畏敬(いけい)の念をいだいた。選考委員のほとんどすべてが絶讃(ぜっさん)を惜しまなかった訳詩集である。
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| 河野多恵子さんは、「この本は大事に取って置きます」と言い、安部公房さんは、
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| 「こういうのを詩というんだよ」とつぶやいた。その本当の詩が、現代ギリシア語から日本語へと、まことにみずみずしく移されたことを喜ぶ。
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| この、言葉の祝祭は、現代日本の詩に対する最上の刺戟(しげき)となるだろう。
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――とのことだが、ギリシア語も英訳の作品も読んでいない(読めない)から、分からん。つい
でに白状すると、私は詩を国語的に解釈するのは苦手だ。
時折、一編の詩から作家を解体するがごとく奥深く分析するエッセイなどを読むと、「ほう!
そういうことだったのか」と思う。こんな難しいことを言葉にできる人たちがいるなんて、本当に
凄いことだとひたすら感心している。
だから、そーゆーことは専門家にお任せして、私は、もやもやと感動したり、たゆたゆと身を浸していたい。
この詩集には、古典アテネの賛美あり、ギリシア没落への嘆きあり、エジプトを風景あり、自
身のささやかな引退を願った詩もある。それらは彼が生まれたアレクサンドリアのギリシア系
住民であることと密接に関係しているのだが、ま、それは置いといて、男色詩、である(笑)。
訳者のお陰でもあるのだが、とにかく言葉が色っぽい。そして、この時代にして驚くほど大ら
かに(あからさまに)男色を謳いあげている。
文章フェチ傾向のある私など、もう〜〜うっとりー。詩は、気持ちよく楽しめればよいと居直っ
て、煩悩を掻きたてている。
妄想ふくらむ(笑)詩を何編かご紹介させていただくが、機会があったら、ぜひ図書館などを利
用して味わっていただきたい。妄想の秋に最適ではないだろうか(笑)。
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