この愚かな日々☆on line                            JUNE発掘隊事務局

JUNEとYAOIの間には暗くて深い河がある
BLもそうかなぁ…



    JUNEの行方
      今や耽美小説という言葉も死語になり「やおい」が取って代り、最近では「ボーイズラブ」というらしい。
      そしていつの頃からか、心騒がせるJUNEに巡り合うことが少なくなった。
      妙な話だけどこの分野が耽美小説と名称で市民権を得て、乱発されるようになってからだと思う。
      化石を掘り出すように発掘する楽しみがなくなったのは残念だけど、選択肢はもちろん、
      ないよりある方がいい。
      ところが、チャンネルが広がった=安易になってしまったのではないかな。
      そこにあるのは恋愛感情だけっていうのが多いのだな。
      それ以外のもの――
      恋愛に限りなく近いけど、いろんな要素を含んでいるって感情があったはずなのに、
      すごく単純なものしか書かれていない。
      そして受け手の方(読者)も、それだけしか区別できないのか、しないのか……
      で、私は思わず叫ぶのだ。「違うだろう、それ!!」



    ではJUNEに何を求めたのだろう
      JUNEに求めるものは人それぞれだけど、一つには理想の世界を求めていたのではないか。
      それは、たとえば「ひたむき」や「一途」「純愛」そして「執着心」だったり、
      いわば、自分と違う世界への憧憬があった。
      JUNE小説がこれほど出る以前は、恋愛だけでない「それ以外のもの」があったはず。
      恋愛に限りなく近いけど、いろいろな要素を含んでいた。
      ぎりぎりの関係、切羽詰った関係がストーリーに深みを与え、たとえば肉体関係なしでも
      邪推できて面白かったのに、そういう要素がないから、かつてのときめきがない。
      それは決して私が年食ったせいではない!――と思うんだけど。


    基本は純愛と執着心
      さーて、JUNEに求めるSEXってなんだろう。
      SMが好きだったり(なんて唐突な!)、明るく楽しくやりましょうだったり、これこそ個人の好み。
      でもプレイゲームだぜい、という感覚はJUNEに求めない。
      実際のゲイの人も求めるのは「純愛」らしいのだけど、「純愛」あってこそのJUNEではないか。
      「純愛」はもともとはプラトニックだったけど、今は肉体関係までも含んでいるらしい。
      「純愛」の定義が変わっているのだが、それは理解できるし、私自身あり得ることだと容認している。
      その「純愛」が、安易に使われてきているように思われるのは気のせいだろうか。
      安易に甘いのが純愛って感じで、少女マンガの世界になってしまっているようなのだが。

    では「純愛」とは? 
      個人的には「執着心」だと思っている。
      SEXにしても楽しいってよりも、やっぱりしがらみがあってやらざるを得ない状況であって欲しいし、
      暴走全部を含めて、ひたむきであって欲しい。
      無論、待っているだけでは純愛にならない。
      かといって「執着心」はエゴのぶつけ合いとは違うはずだし、安易に執着すりゃいいってものでもない。
      自分とチャンネルが合って、ハマって好きになるのだから、表現の好みもあるのだとは思うんだけどね。
      ちなみに、個人的には私は執着しないタイプです。
      執着しないからする人に憧れるというか、理想を求めるというか……
      お年頃のせいか「ひたむき」とか「一途」とか、そういうものに惹かれるのかな。
      自分とは違う世界かなーって感じで。


    その本質とは
      JUNEの本質は「やおい」じゃないはずだ。
      もちろん恋愛だけでは薄っぺらいのだが、それをはき違えているように思える。
      個人的見解だけど、そこに「内包された破滅と予告された不幸」があってこそJUNEなのだ。
      根底にあるのは 「結局人間は独りなのさ」という孤独感ではないかな。
      「どうしようも無さ」っていうか……。
      だから「支え合っていかなきゃ生きていけない」ともなる。
      どんなハッピーエンドでも、底のところにそれがある。
      そこのあたりに美学を感じるし、拘りたい。
      私がその拘りをもっとも感じた作家は、もう書かなくなった野村史子氏である。
      「レザナンス・コネクション(共鳴関係)」「テイク・ラブ」に代表される作品にあるのは、息苦しいまでの
      純愛だ。
      痛いほど張り詰めた緊張感、執着心――切なく危うい男たちの関係。
      全てが儚い。「内包された破滅と予告された不幸」を背景に恋愛美学が貫かれている。
      もう、鳥肌モノの傑作である。

      ところが今は、悲劇性が求められないんです。
      架空世界くらい夢を持たせてっていうか、幸せな思いをさせてほしいというのが
      当世お嬢さん気質でしょう。
      でもそれでは少女マンガと変わらないんじゃないかな。
      愛されたいストーリー――それって、JUNEじゃない。
      少女マンガと同じパターンをJUNEに求めているわけで、甘々のものも楽しいと思うけど、
      それはJUNEとして楽しいというより、少女マンガを読む楽しさに近いものでしょう。
      それだったら♂×♂に拘る意味がないんじゃないかな。

    だから、JUNE
      JUNEって男女の恋愛以上にハードルが高くて、パワーも必要だと思う。
      happyendでもunhappyでもいいけど、
      幸せになるためには打ち破らなければならない壁が、高いわ厚いわ……
      そーゆーところがあまり書かれていないので消化不良起こしちゃうんです。
      happyendでもunhappy――私的好みをいえば、底まで行く過程が好きなので、
      安易なhappyendより余韻のあるunhappyの方が好き。
      極端な話、結論が出なくて、あとは自由に想像して下さいっていうパターンでも良い。
      ふっふっふ……マイナー路線まっしぐらだわーって、自覚はあるのだが……拘りたい。

    悟りたくないんだけど
      もどかしい風潮に溜息しつつ、やがて遅れ馳せながら私は悟った。
      いわゆる耽美小説、やおい、BLは恋愛小説なのだから、そこにときめきや深読みを求めちゃいけねぇ。
      ひっそりこっそりときめかせてくれた押入文学は、市民権を得たときすでに解放されていたのだ。
      でもねー、友情とか執着とかいろいろな感情を全部、恋愛にしちゃうのはちょっと……。
      男って「男」ってモノにプライドを持っているんだし。
      「男であることにプライドを持って生きている男たちの物語」 
      っていうのがすっごく好きな私としては、つい「当時」を懐かしんでしまうのだな。

2001.11.24
(初出/1996.8発行・同人誌収録に加筆訂正)
  

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