「ムーン・ファイアー・ストーン」 講談社X文庫ホワイトハート
正式名称は『テイルズ・フロム・サード・ムーン』
『ムーン・ファイアー・ストーン』シリーズ
1,金と銀の旅(1991年4月)/2,銅の貴公子(1991年5月)/3,極彩の都(1991年6月)
4,月光の宝珠(1991年8月)/5,青い都の婚礼(1991年10月)
女神の祝祭日 (1991年12月)
魔術師の弟子 上 (1992年2月)
魔術師の弟子 下 (1992年4月)
『ムーンライト・ホーン』シリーズ
1,一角獣の道(1992年7月)/2,月下の出航(1992年9月)/3,星と闇の王(1993年1月)
4,海の真珠(1993年4月)/5,金色の少年(1993年9月)/6,茜の大陸(1994年4月)
7,神聖王国の虜 (1994年11月)/8,密林の聖獣(1995年6月)
深緑の騎士 (1993年7月)
石像はささやく(1997年7月)
全て絶版になっていますが「小沢淳☆公式ホームページ/MoonCafe」で私家本の通販しているそうです。→http://www.t3.rim.or.jp/~moontime/
▼内容
通称「金銀シリーズ」、「金銀諸国漫遊記」と呼ばれている。
世界はかつて三つの月を持っていた、しかし今では黄金と白銀の二つの月しか持たない。
この地を旅する、金髪のリューと銀の髪を持つエリアードの二人の青年がこの物語の主人公である。その失われた第三の月こそが、彼らの生まれた地であった。
このシリーズでは長編・短編を織り混ぜ、月のごとき美貌の二人が旅先で出会う様々な出来事を綴った耽美系ファンタジーシリーズ……ヒロイニックではないと思う。
▼書評
ティーンズ向けだからというわけではないが(ティーンズも侮れない昨今)さらりと、葛藤なく読める諸国漫遊記(笑)。
実は、この作品はJUNEという意味ではなく、JUNE史という意味で果たした役割がかなり大きい気がするので紹介させていただく。
明るくて綺麗でリアリティは一切ないホモセクシュアルを、堂々と少女向け小説で書いてしまったことで、当時、いわゆる耽美といわれていたジャンルを当たり前のBLという意匠に押し上げてしまった作品である。
榊原姿保美氏などが「JUNE」の中で暗くひっそりと(笑)やっていたものを、白日の下にさらけ出し、一般的(メジャー)なものにしたわけで、この作品のヒットにより、その後耽美物中心の角川ルビー文庫まで誕生させたといって過言ではない。
当時から美少年同士の絡みは確かに少女たちに受けていたけれど、アナル・セックスの描写まで出てくるジュヴナイル小説はこれまでなかった。
もちろん作品には男同士の激しいセックスシーンはないものの、「同性愛はアブノーマル」という葛藤はみられる。
ある意味で革新的ではあったけど、現状を考えると、こうまであらか様になったのでは少々面白くないと感じるのは、たぶんかつてのJUNEファンではなかろうか。
そういう意味で分岐点的作品なのであり、当時、耽美系には珍しかった伸びやかな明朗さが新鮮で私自身は好きな作品だった(じゃなければ全巻読んでないって)。
余談であるが、悩んだのは、一般的には女性的容姿のエリアードが「受」で、基本的に女好きなリューが「攻」だと思うのだが、物語が進むにつれ、文脈の微妙な言い回しからはどう考えても「逆」のように受け取れてしまうことだった。もしかしたらリバーシブルだったのか?
だとしたら、その意味でも革新的だったかもしれない(笑)。
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