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乾くるみ  







 リピート2004年10月/文藝春秋


帯にあった『リプレイ』+『そして誰もいなくなった』に挑んだ傑作――に惹かれて、思わず手に取った。少しばかり現代物のSF系ミステリから(というジャンルがあるのかは知らないが)遠ざかっていた私としては、久しぶりのヒット♪

ある日、大学4年の毛利のところに、今から1時間後に地震が起こるという電話がくる。風間と名乗る男は、時間旅行者=リピーターだった。
「一緒に過去の自分に戻りませんか?」
彼は、今の記憶はそのままに、意識だけ10ヶ月前の自分に戻れる時間旅行=リピートに、毛利を勧誘する。疑いつつも参加した説明会には、年齢も職業も異なる9人が集まる。リピートというものに疑心暗鬼を抱きつつ、案内役の風間を含め、10人を乗せたヘリコプターは時空の裂け目へと向かう。

現在の記憶を保ったまま過去の自分に戻って人生をやりなおす。ただし10ヶ月だけしか戻れない――この10ヶ月という微妙な時間が面白い。たった10ヶ月前をすでに経験している自分と、10ヶ月前の周囲との、ボタンの掛け違えのような微妙な距離や違和感が絶妙。
後半は、リピートした仲間がつぎつぎと殺されていくというミステリ色を強めていく。
仲間が1人ずつ死んでゆく。次は誰が…という恐怖と、犯人探し。謎は疑心暗鬼とともに少しずつ大きく膨らみ、緊張を孕んでいく。

10ヶ月前――私は何をやっていただろう。もし「リピート」できたら何をするだろう。何を考えるだろう……。
乾くるみさんといえば、「Jの神話」から角川ホラー系のイメージだったのだけど、食わず嫌いは損をすると反省。様々な想像を膨らませながら、ミステリとしても大いに楽しめるエンタテイメント作品である。




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