竜の紋章〜Season〜(上・下巻) 桜桃書房 ECLIPSE ROMANCE
生きているという事実が、そのまま何よりの復讐になるのだ。
▼内容 辺境宇宙に位置する巨大な宇宙ステーション・ダレスに君臨するラグウルは、類稀なる美貌と冷徹な頭脳、辣腕すぎる行動ゆえに、アンドロイドの様だと噂されている。実は彼は哺乳人類とは種の異なる出自で、王の予備として育てられた過去を持つ。孤高なるラグウルを「王のようにも娼婦のようにも扱う男」宇宙貿易商人・ドレイクは、この世界での唯一の同族種だった。
ダレスで起こった珍しくもない殺人事件がきっかけで、二人は巨大組織にその命を狙われることになる。警備主任・ガイアーやその恋人で『未来見』ゆえに短命のユヴェールの行く末をも賭けながら、ラグウルとドレイクの戦いが始まる。
▼書評
舞台は宇宙なのでSFと位置づけられているが、風刺的な表現も多く、ほとんどファンタジーのノリで読める。 ダレスという王国に君臨しながらも、意にそまぬ運命を受け入れなければならなかったラグイルの深奥にある、孤独と多種族への怖れや嫌悪。そのプライドの高さゆえ、決してそれを弱みとして見せまいとするラグウルの唯一の理解者であるドレイク。 シリアスかつ不幸な背景にも関わらず、ラグウルの女王様なヒロイン振りと、彼に蹴られても、銃弾を撃ち込まれても求婚し続ける懲りないドレイクの関係が、ラブコメタッチで楽しい。 硬軟、善悪取り混ぜた脇を固める役者も揃い、細部の肉づけのうまさとノリのよさでついつい引き込まれてしまう。 振幅の大きい作品だが、それなりに陰影をもたせて展開、意地をはるのも命がけなラブストーリーとスペースファンタジーが一緒に楽しめる。
以下余談。
後書きによると作品の「宇宙」の設定はずーっと変わっていないとのことで、『ノーマッド号の冒険』とも世界が繋がっているらしい。それで再読しようと探したが見つからない。どうやら2、3ヶ月前の本の大整理が原因らしい…なんでも整理する癖がいかん(泣)。ちなみに超絶美形の青年がぞろぞろ出ていたことしか覚えていない……。
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