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新田一実(にった かずみ)

実は、里見敦子氏と後藤恵理子氏の二人の女性のペンネーム。
新田一実氏という作家ユニットを最初に知ったのは、今は亡き大陸書房のファンタジー系レーベルからいくつかのシリーズを出していたからだ。大陸書房からは私が大ファンの斉城昌美氏の作品が出版されていて、その頃私は、大陸のファンタジー系ノヴェルズを狙って読んでいた。
「出版社買い」なんていうわけの分らない私の趣味(?)の関係で、まず出会ったのは天海沙姫(あまみ さき)名義で執筆された『ノーマッド号の冒険』シリーズ(全7巻 1991/04〜1992/07) だった。一応、舞台設定は宇宙だし、異種族も出てきたりしてSFに分類されるのかもしれないけれど、それはほとんど意識しなかったと思う。ノーマッド号が海賊船という設定といい荒唐無稽なストーリー展開といい、楽しめるけど、設定マニアの感が強かった。その後『神鬼妖変伝説 1-5』も読んだ記憶はあるが、やはり感想は似たような感じだった。やがて大陸崩壊(笑)、天海沙姫という作家も作品も、どこか遠い記憶の彼方へ去っていた。

その後「天海沙姫」と「新田一実」が同一人物(ユニット)であることを知るのだが、新田一実名義の作品は『邪龍幻紀』くらいしか読んでいない。やはり設定マニアの感が強かったかな。それはたぶん、ユニットで書いているからかもしれない。アイディアも文章も完全共同作業、交替で文章を打ち込んでいるということなので、細部にまで設定や構成を打ち合わせする必要があるのだろうと想像している。

著作に『海神の寵児ディロン』『暁の竜王』『霊感探偵倶楽部』などシリーズ物多数。――「霊感探偵倶楽部」全12巻、「新・霊感探偵倶楽部」全12巻、「真・霊感探偵倶楽部」12巻「姉崎探偵事務所」1巻――つまりこの作品は通しで37巻でさらに続行中。


■ 竜の紋章〜Season〜






 竜の紋章〜Season〜(上・下巻) 桜桃書房 ECLIPSE ROMANCE

生きているという事実が、そのまま何よりの復讐になるのだ。


内容
辺境宇宙に位置する巨大な宇宙ステーション・ダレスに君臨するラグウルは、類稀なる美貌と冷徹な頭脳、辣腕すぎる行動ゆえに、アンドロイドの様だと噂されている。実は彼は哺乳人類とは種の異なる出自で、王の予備として育てられた過去を持つ。孤高なるラグウルを「王のようにも娼婦のようにも扱う男」宇宙貿易商人・ドレイクは、この世界での唯一の同族種だった。
ダレスで起こった珍しくもない殺人事件がきっかけで、二人は巨大組織にその命を狙われることになる。警備主任・ガイアーやその恋人で『未来見』ゆえに短命のユヴェールの行く末をも賭けながら、ラグウルとドレイクの戦いが始まる。


書評
舞台は宇宙なのでSFと位置づけられているが、風刺的な表現も多く、ほとんどファンタジーのノリで読める。
ダレスという王国に君臨しながらも、意にそまぬ運命を受け入れなければならなかったラグイルの深奥にある、孤独と多種族への怖れや嫌悪。そのプライドの高さゆえ、決してそれを弱みとして見せまいとするラグウルの唯一の理解者であるドレイク。
シリアスかつ不幸な背景にも関わらず、ラグウルの女王様なヒロイン振りと、彼に蹴られても、銃弾を撃ち込まれても求婚し続ける懲りないドレイクの関係が、ラブコメタッチで楽しい。
硬軟、善悪取り混ぜた脇を固める役者も揃い、細部の肉づけのうまさとノリのよさでついつい引き込まれてしまう。
振幅の大きい作品だが、それなりに陰影をもたせて展開、意地をはるのも命がけなラブストーリーとスペースファンタジーが一緒に楽しめる。

以下余談。
後書きによると作品の「宇宙」の設定はずーっと変わっていないとのことで、『ノーマッド号の冒険』とも世界が繋がっているらしい。それで再読しようと探したが見つからない。どうやら2、3ヶ月前の本の大整理が原因らしい…なんでも整理する癖がいかん(泣)。ちなみに超絶美形の青年がぞろぞろ出ていたことしか覚えていない……。



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