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杉浦日向子 (すぎうら ひなこ)








一日江戸人 

2005年4月/新潮文庫


軽妙なおしゃべりと楽しいイラストで江戸庶民の様々な文化や風習を紹介するガイドブック。

まず、ざっと江戸の市井の人々、奇人変人、色男や美女を紹介する入門編。長屋での生活、夏冬の過ごし方を指南する初級編。中級編では酒や食にまつわる話や、現代でも江戸気分を味わえる東京の散歩コースのご紹介。さらに上級編では春画、意匠、洒落を考察する。

うーむ…わたしゃ、江戸時代の庶民に生まれたかったなあ。
怠け者で商売嫌い。その日その日を食いつないでさえいればどうにかなる。そんな彼らだから、ろくに定職にも就かず、毎日が日曜日の気ままなその日暮らし。現代なら、さしずめニートとかフリーターかなあ。でも江戸っ子はそれが当たり前。
脳天気なほど楽天的な彼らは少しも卑屈になることなく、日がな一日ゴロゴロして、懐が寂しくなれば、夏なら布団を質草に入れ、冬なら蚊帳を質草にする。そして懐が寒ければ寒いなりに、積極的に生活を楽しむ術を知っていた。
なんせ、月のうち半月も働いたら十二分に一家が食べる事ができるし、身体さえ健康ならいつでもどこでも働けたそうで…。
なんたって驚いたのは、素人のバイト医者が溢れていたこと。当時は医師免許なんて、当然ない。その医者ってえのは剃髪していたので、「髪を結うのが面倒だから医者になるかあ」というのもあったわけで…これはコワイ。それでも、いいなあ――お気楽というか…呑気で。

奢った生き方を気障と嫌い、他愛のないことを面白がり、大らかに人生を楽しむ江戸っ子気質。日常のありふれた生活ぶりが活き活きと浮かんできて理屈抜きに楽しい。
現代では実践しようにも大変そうな、憧れのスローライフ。
ああ…生まれる時代、間違ったかなあ(笑)。




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