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このページは、短文の書評をまとめてあります(当サイト比…笑)。
長文の書評と2作品以上の書評は、作家別のページになっています。








神殺しの丘日向真幸来(ひるが まさき)

 2001年1月/朝日ソノラマ文庫


ローマ帝国がキリスト教を国教とした時代を舞台としたファンタジー。
キリスト教が国教となり、ついにローマから異教の追放が始まった。神殿を追われた楽師カノンは、放浪の果てに辺境ブリテン島の海岸に漂着する。そこで彼を待ち受けていたのは、ケルトと異邦の神々との争いであった。

(たぶん)発売当時に購入。このたび書棚から無事発掘されたが、積読本になっている間に絶版になっていた。
古代ローマ時代のブリテンという、とても珍しい題材を使い、人間と神の関係をファンタスティックに描いた野心作。
舞台設定は緻密に作りこんでいるし、考証もしっかりしている。儀式の描写などケルトの世界観は良く出ており、読みごたえがある。ストーンサークルを舞台にした異郷の神々の降臨シーンは、非常に魅惑的。このあたりは私の異世界好みを大いにくすぐる。
落ち着いた文章で読みやすいが、ライトノベルとして読むならキャラが弱く、物語の方は少し物足りないといった微妙な読後感。去勢された青年楽師、勝ち気な巫女、無骨な剣闘士といった人物の個性が生かしきれていないのが残念。三人の関係も、もっと踏み込んで描いてほしかった。






ステュクスの一族
黄泉河の王
竹河 聖

『ステュクスの一族』(1991/11 天山出版/立風書房)/『黄泉河の王』(1994/12 立風書房)


デキムズは、敬愛する将軍が暴君ネロに対抗するための力=「帝王の玉」を得るために、闇の王・ディオンの封印をとく。闇と霊と精霊とを従え、永遠の命を持つものこそが闇の王だ――ただし、血を得ることができれば。

ステュクスとはギリシア神話で冥界を流れる地下の川のことで、古代ローマ世界と吸血鬼を融合させた、竹河さんらしいファンタジー。
朴念仁(実直)のデキムズと小悪魔的な美貌のディオンの、男同士の友情と愛情との微妙な温度差がなんとも艶かしい。生々しい流血描写シーンがあるにも関わらず、行間から立ち昇るのは血の匂いではなく、不思議な透明感と、退廃的なエロティズムなのは、この作者の特徴だろうか。吸血鬼物として、腐臭を漂わせる一歩前の様式美がある。

シリーズ2作品を通してサブストーリー的な展開で、「帝王の玉」を届ける旅の途上。
10年も経ってしまっては、もはや続編は無理かもしれない。根強い(しつこい)ファンとしては残念…。




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