2001年1月/朝日ソノラマ文庫
ローマ帝国がキリスト教を国教とした時代を舞台としたファンタジー。 キリスト教が国教となり、ついにローマから異教の追放が始まった。神殿を追われた楽師カノンは、放浪の果てに辺境ブリテン島の海岸に漂着する。そこで彼を待ち受けていたのは、ケルトと異邦の神々との争いであった。
(たぶん)発売当時に購入。このたび書棚から無事発掘されたが、積読本になっている間に絶版になっていた。 古代ローマ時代のブリテンという、とても珍しい題材を使い、人間と神の関係をファンタスティックに描いた野心作。 舞台設定は緻密に作りこんでいるし、考証もしっかりしている。儀式の描写などケルトの世界観は良く出ており、読みごたえがある。ストーンサークルを舞台にした異郷の神々の降臨シーンは、非常に魅惑的。このあたりは私の異世界好みを大いにくすぐる。 落ち着いた文章で読みやすいが、ライトノベルとして読むならキャラが弱く、物語の方は少し物足りないといった微妙な読後感。去勢された青年楽師、勝ち気な巫女、無骨な剣闘士といった人物の個性が生かしきれていないのが残念。三人の関係も、もっと踏み込んで描いてほしかった。
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