津守時生<2>



長年追っかけをしている津守時生先生の壮大なスペース・オペラ
『喪神の碑』 『カラワンギ・サーガラ』 『三千世界の鴉を殺し』 の3作品の部屋。
これらの作品は各々独立していますが、同一時空軸で時系列の物語です。
限りなくJUNEちっくな微妙な男たちの関係が素敵♪














喪神の碑 全5巻 平成2年〜3年/角川書店・スニーカー文庫/イラスト・小林智美

 1、ラフェールの末裔/2、ウロボロスの影/3、カイユの封印/
 4、フィラルの戒厳令/5、エリノアの光輪


「最後の一呼吸まで戦うと決めたときから、 苦痛にも恐怖にも膝を折ったりしません」

by マリリアード・リリエンスール  
ジョナサンが求人広告に応じてなりゆきで乗り込んでしまった宇宙船の船長にして超絶美形の青年・マリリアード・リリエンスールは、生化学兵器によって惑星ごと滅ぼされた、天使の末裔と呼ばれるラフェール人の生き残りだった。彼の目的はラフェール文明の再興。
ラフェール人の根絶をもくろむ大規模なテロ集団の陰謀と丁々発止の闘いが続く。だが船長の身体は刻々と病魔に蝕まれていく。壮大かつ波乱万丈なスペース・オペラ。

とにかく導入部から勢いがある。SFということで敬遠する向きがあるかもしれないが、事情が分らないまま宇宙に放り込まれ、やがて世界観が明らかになるに従い、どっぷりと飲み込まれてしまう。
滅亡しつつあるラフェール人の王族直系の最後の生き残りであるマリリアードは、どうしても他者より重責を託される立場にある。文武両道の超絶美形で、自らも死の病に侵されながらも艱難辛苦に立ち向かう悲劇の王子。だが本人は常に前向き、悲壮感の欠片もない――いかにもエンタテイメントな設定だが、英雄譚ではない。むしろ、すべての責任を一人の人間に押し付け、頼り、すがりつつも、自らの置かれた状況を諦念し、因習にしがみつくことで自分たちの在り方を肯定しようとする者の傲慢さを批判し、対等であるべき人間関係を描いている。
マリリアードのあり方は「親」のあり方だ。そして、心理的に親から独立して子は一人前になる。
しかし、それも宇宙規模になると大迷惑。ラフェール滅亡の引き金となるのも、いわゆるアダルトチルドレン的な屈折した心理による。つまり、親殺しによって自立するという理屈。
何も悪いことをしていないのに殺される方はいい迷惑だが、愛と憎しみは紙一重。愛憎に雁字搦めにされた「子」にしてみれば、自分が生きるための傲慢な理由。むろん、どうにも正当化できないのだけどね。
だが、彼らに向けるマリリアードの視線は常に優しい。自分自身に対する厳しさがあってこそ、人は人に対して優しくなれるのだろう――耳が痛い。

「男の色気と美貌、女の度胸と腕力を追及する」作者の言葉通り、善人悪人入り乱れてのキャラも魅力的。中でも、名前だけは耽美な超絶美形コンビ、マリリアード・リリエンスール(マリリン)とオリビエ・オスカーシュタイン(O2)の漫才が最高。このコンビの、何ものにも換え難い男の友情にうっとり…弱いんだな、こういう関係(笑)。
重いテーマをエンタテイメントにさり気なく織り込んで、キレがよくてノリがよい――新刊が出るたびに1巻目から読み直し、もちろんその合間にも再読を繰り返し…と何度読み返したことか(笑)――津守ワールドの真骨頂♪

補足として、本作で張られた伏線が後の『三千世界の鴉を殺し』シリーズにしぶとく生きてくる。



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カラワンギ・サーガラ 全4巻 平成5年/角川書店・スニーカー文庫
/イラスト・小林智美/平成12年、完全版として全3巻で再版
1、密林の戦士/2、虜囚の惑星/3、犠牲の神/4、神と人の物語


「たった一つ大切なものがあれば、私にはそれで充分だ」

by オリビエ・オスカーシュタイン 
スーリヤは夏期休暇を過ごすために、森林生態学者である叔母のいる未開の惑星マサラを訪れた。銀河連邦法によって異文化との交流を禁じられた熱帯性雨林気候のマサラの奇妙な植物生育、カワランギと呼ばれる巨木信仰、優れた能力を持つカオヤイという戦士たち――スーリヤの出生の謎は、惑星マサラの不可思議な進化と複雑に絡み合い、この星の運命を担うことになる……。
てっきりファンタジーだと思っていたら、前作『喪神の碑』の30年余後の同一宇宙空間の別惑星での物語。人間の傲慢な好奇心と利害に翻弄されつつも、懸命に前向きに生きようとする惑星マサラと、その惑星に生きる生命を、力強く暖かな視点で描いている。
なによりもカオヤイが魅力的。強くて優しい――人間かくありたいものである。
最終巻、溜め息をつきたくなるような美味しい場面で前作『喪神の碑』のキャラが登場。切ない恋あり、裏切りありと目まぐるしく展開し、前作の後日談に衝撃も受け、気がついたらSFだった。
津守氏自身が後書きで「性格歪んでいない美形ってリアリティないと思うの」とバラしている通り、一癖も二癖もある魅力的な人物がそろっている。もちろん外面もさることながら、内面的な魅力は人物の行動、会話に表れるもの。なぜか美形度が高まるほど、性格が歪んでいるのは作者の趣味らしい(笑)。そして本作でも「対等であるべき人間関係」が提議されている。

『喪神の碑』で張られた伏線がちらちら出てくるので、前作を読んでからの方が分りやすいと思うが、物語自体はみごとに収束しており、ことにラスト・シーンの美しさと余韻が心に沁みる。

平成12年、完全版として再版されたシリーズでは、一巻につき一話ずつ番外編が書かれているが、完全版の方は最終巻以外、未読。←ゼロ船長の秘密が明かされるというので、悩んだ挙句買ってしまった。これを書いているうちに他の外伝も読みたくなっっちゃったぞ。出版社の関係(陰謀)だろうけど、初版で読んでいる立場からいうと、これってちょっとあざとい……。



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三千世界の鴉を殺し 現在11巻まで刊行中/平成11〜14年
/新書館ウングス文庫/イラスト・古張乃莉(藍川さとる) 

「おばかさんね。あの多忙なO2に、
そこまで手間をかけさせるほど愛されているってことじゃないの」

by ライラ・キム 
宇宙軍情報部の大物・O2の息子である、ルシファード・オスカーシュタインが主人公。
副官・ライラ・キムと共に辺境の惑星に赴任してきた彼は、あまたの軍功をたて、最高勲章を三つも胸に飾りながら、昇進・左遷を繰り返すトラブルメーカーでもある。
事件らしい事件も起こらなかった平和な惑星に駐留する太平楽な軍隊は、彼の赴任と共に、華麗にして刺激的な混乱と困惑と激怒と大爆笑の渦に巻き込まれていく。

『喪神の碑』『カワランギ・サーガラ』と同一時空間のストーリーだが、前作よりコメディ度が高く、つい吹きだしてしまうから、公共の場では読めない。
作者いわく、ボーイズ・ラブならぬガイズ・ラブということだが、おそらく(たぶん、絶対)ラブストーリーには落ち着かないだろう。でも、津守氏の描く殿方は、そこに居るだけで妖しい艶があるから、それだけで満足♪
O2の過去がルシファードによって少しずつ暴かれ、彼の冷徹なイメージがガラガラと崩れて…いや、もともと変態さんだから「さもあらん」かもしれない(笑)。

戦闘機が飛び、光線が飛び、石が飛び(?)、悪口雑言が飛び交う、「男はガキ」を証明する軍隊物コメディー(たぶん違うだろう)は、日ごろの鬱積が溜まっている方にもお薦め。
ストーリー展開は、ようやく事件の輪郭が見えてきたところ。










Material: CoolMoon




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